上野の森美術館で開催中の「聖地チベット〜ポタラ宮と天空の至宝〜」展について 経過報告と声明

By IAATE, 2009/12/04 13:30

主催団体:財団法人日本美術協会、上野の森美術館、朝日新聞社、TBS、
大広、中華文物交流協会、中国チベット文化保護発展協会
協力団体 :JAL日本航空、日本通運 に送る公開要請

2009年12月4日「聖地チベット」展に抗議する国際連盟

独立国家であったチベットが中国の武力による侵略により被占領国となってから50年の歳月が経ちました。チベット仏教最高指導者で、ノーベル平和賞受賞者であるダライ・ラマ法王の提案する『非暴力主義』による、チベット人の独自の文化や自決権を取り戻すための努力は、今日もチベット人と世界各国に散らばった亡命チベット人によって絶え間なく続けられています。
そして、国際社会のチベット支援者達はチベット問題の『非暴力』による紛争解決を支援することこそが、従来の武力に依るものでない人類による紛争解決への進化の『証し』であるとして、世界中に広がりつづけています。

これまでの経過

「聖地チベット」展に関して、私たち国際連盟は2009年6月より、上野の森美術館館長・水野政一様への公開書簡、および協賛企業への公開質問状を関係所管に送付してきました。展覧会の内容が、中国政府によるチベットの50年の弾圧の歴史の解決の手助けとなるよう、また日本企業であるチベット展協賛企業に対し、チベット問題に対する双方の主張を踏まえた、日本独自の中立な見解を反映したチベット人とその支援者の意見を反映した「包括的な」内容の展覧会にしてくれるよう、お願いしてきました。

しかしながら、「聖地チベット」展実行委員会から送られた協賛企業を代表する回答には、そうした配慮を一切される意志のない旨の、極めて簡潔な数行の「開催に至る経緯と展覧会の趣旨」の説明のみが記されていました。また、9月の展覧会開始直後には 、株式会社大広チベット展運営委員会代表による、展覧会の見解としての「チベット人は存在しない。(中国の少数民族である)チベット族しか存在しないという立場で(行っている)。」との発言があり、この展覧会と協賛企業の姿勢がチベットを取り巻く問題に対する中立性を全く無視した、社会企業として良識のないものであるとの認識を新たにさせられました。

「聖地チベット ポタラ宮と天空の至宝」展に抗議する国際連盟は、世界中にこの展覧会の実態を明らかにするため、改善の様子が見られないチベット問題の近況をあわせて報じながら、世界各国のチベット支援グループを通じ、様々なキャンペーンを展開しています。

聖地チベット展は2009年9月19日から2010年1月11日まで東京、上野の森美術館で開催され、その後、大阪歴史博物館に場所を移し2010年1月23日から3月29日まで、また仙台市博物館にて2010年4月20日から5月20日まで開催予定です。

「聖地チベット」展に抗議する国際連盟は、今後このチベット展が巡回していく、大阪、仙台の展覧会開催者、そして協賛企業に対しても、社会的責任のある公の組織、企業として、目先の営利を追い求めるだけでなく、 21世紀の世界中の紛争の解決手段として、人道主義と『非暴力』による問題の解決こそが唯一可能な道筋であるとの証しを、チベット問題に託し、 世界平和に向けた積極的かつ具体的な働きかけをするよう、引き続き強く求めていきます。

以上

以下補足資料

*以下は現在のチベット問題をとりまく国際社会の動きをまとめたものです。これらの事実は、いかに「聖地チベット展」の開催者、協賛企業の立場が、国際社会の動きから外れたものであるかを反映しており、また、「聖地チベット展」にまったく記述の無い本当のチベットの姿を知ることのできる参考資料です。

アメリカ政府の動き:

先頃アジア諸国を訪門した米オバマ大統領は、訪問先の中国・上海で、市内の大学生約500人と対話集会を行いました。中国でインターネットの閲覧規制が敷かれている現状を踏まえ、「情報の流れが自由になればなるほど社会は強固になる。各国の国民が自分の政府に説明責任を負わせることができるからだ」と述べ、チベット自治区や新疆ウイグル自治区での住民弾圧などを念頭に、「我々は、表現や信教の自由、政治参加の自由を世界共通の普遍的権利と考える」と語り、「米国や中国を含むすべての国で、少数民族や宗教的少数派の権利が確保されるべきだ」と強調しました。中国、胡錦濤国家主席との会談では中断している中国側とチベット仏教の最高指導者、ダライ・ラマ14世の特使との対話の早期再開を求めました。

またアジア訪問に先駆け、10月1日には米ヒラリー・クリントン国務長官より正式にマリア・オテロ国務次官がチベット問題担当特別調整官に任命されています。
オテロ次官は本年9月、オバマ大統領の上級顧問兼補佐官であるヴァレリー・ジャレット女史と共にインド・ダラムサラでダライ・ラマ法王と会見し、「オバマ大統領は、チベットの人々を支援し、チベット固有の宗教、言語、文化の伝統が守られ、チベット人の人権と公民としての自由が尊重されるよう尽力することを約束する」と伝えています。
http://www.tibethouse.jp/news_release/2009/091004_us.html

:アメリカ議会では「中国政府は国民の言論、結社、宗教などの自由を抑圧している」と述べ「中国政府がチベット人の言語、文化、伝統を抑圧し、とくに宗教面で従来のチベット仏教を変質させようとした」ことがチベット人側の反発の理由だと述べました。同委員会の見解として、中国における政治犯、宗教犯は中国内部の正規の逮捕や判決の手続きをも踏んでおらず、懲罰を加えること自体が不当だとみなしています。

:また中国政府が渡航先の国々に対し、繰り返し「祖国分裂を扇動する」として入国に関して圧力を加えるダライ・ラマについては、米国の1992−93年の米国外交授権法102−138のなかで「チベット人に認められているように、チベットの正当な代表はダライ・ラマとチベット亡命政府である。」と認定しています。

– The US Congress has passed a law on this subject:
“Tibet’s true representatives are the Dalai Lama and the Tibetan Government in exile as recognized by the Tibetan people”
(Section 355, H.R. 1415, FY1992-93 Foreign Relations Authorization Act,
Public Law 102-138)

チベット人死刑執行とイギリス政府の動き:

中国政府は、昨年、2008年3月のチベット暴動に於いて、死刑判決が出ていたLobsangGyaltsenとLoyakの2名のチベット人を10月20日に処刑しました。また、この件では他に二名(Penkyiという名前の女性と氏名不詳の1名)が処刑されたという報告がチベットから寄せられています。中国の司法制度に於ける、透明性と責任所在の欠落、また中国政府による、チベットに関する情報封鎖により、これらの報告の確認は困難を極めており、チベット人に対する死刑宣告に対し、再三強い懸念を表明して来たイギリス政府は中国に対しイギリス外務省国務大臣の「9月のチベット訪問の際にも、これらの件について強い懸念を表明し、当局に対し死刑執行を取りやめるよう要請した。昨年の動乱に参加した罪で、現在死刑を宣告されているもの全ての再調査を緊急に行う要請をする。」と,欧州議会と、同時に抗議と要請を訴えました。

チベットの近況:

2008年3月以降、チベットで起きた抗議行動について発言する者について、中国政府は取り締まりを強化し、その際、拷問、蒸発、超法規的処刑などの行為が多数報告されています。
チベット人による彼らのアイデンティティーに関する公の表現に対しては、「反動主義者」や「分裂主義者」のレッテルを貼り、裁判なしの拘禁や、判決に於いても重い刑罰を科しています。チベットの文化人、作家やブロガーで、現状に対して自分の意見を表明する者も、以前より高い確率で「蒸発」したり、長期に渡る刑を言い渡されているとの報告が寄せられています。

中国が自治区と指定する新疆ウイグル自治区で今年7月に暴動が起き、死傷者1000人以上という大惨事となりました。その背景となっている民族的差別に抗議する平和的なデモに参加するウイグル人に対する中国の武装警察の武力鎮圧は、国際社会に衝撃を与え、また現地に進出している漢人との民族的な感情も修復できないほど増幅されている事実が明らかになっています。同じく自治区とされる、モンゴル族が住んでいる内モンゴル自治区では、漢族の人口が80%を超え、伝統や文化の破壊が進行し、民族の言葉を話す住民が減っている報告がなされています。

また中国と国境を接するアジアの国々では、中国による軍備の増強と、その影響が、近隣諸国のみならず国際社会にも影響を及ぼしています。今年9月には,中国軍はインド側の国境線に1.5キロ侵入し,その付近の石を赤いスプレーで塗り、インド側の緊張を煽ったことが国際的に報道されています。

昨年の報告では、現在2万人のチベット難民が定住しているネパールで、中国政府はネパール政府に対し1,200キロにも渡る国境沿いに、1万人の警備隊を配置するように求めました。ヒマラヤの峰を越え、ネパールに至るルートは、チベット人にとってダライ・ラマの亡命先、北インドへむけて、すなわち自由への道として存在して来ましたが、そのルートを閉ざす目的でネパールに対し様々な圧力が強化されています。このルートの中の一つナンパラ峠では、2006年、中国軍の発砲によって難民が射殺されています。
このほか、チベット亡命議会と接触するネパール国会議員に対しは渡航目的のビザ発給を拒む等して圧力を加えており、ネパール軍関係者は、中国治安当局がチベット人とその支援者に対する監視目的で、ネパール入りしている事実を認め、国際通信社の記者やカメラマンが取材妨害を受けていることも報告されています。

先出の難民射殺時件に関しては現在スペイン最高裁で,スペイン法律と国際法の両方から「人道に対する罪」として調査中であり、今年7月には射殺事件を目撃した外国人登山家らによる法廷での証言が行われました。スペイン最高裁の調査資料では「チベット人は政治的、人種的、民族的、国家的、文化的、宗教的、または他の目的で、国際法の下で普遍的に受け入れがたいと認められる迫害を受けているグループ」と認められています。

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