「純粋な美術展」としては好評=「聖地チベット」展にチベット関連団体が抗議書(中) (PJニュース)
(PJニュース)「純粋な美術展」としては好評=「聖地チベット」展にチベット関連団体が抗議書(中)
藤倉 善郎
【PJニュース 2009年8月9日】(上)のつづき。9月19日から東京・上野の森美術館で開催予定の「聖地チベット ポタラ宮と天空の至宝」について、「聖地チベット ポタラ宮と天空の至宝」展に抗議する国際連盟(IAATE)が上野の森美術館に抗議を申し入れている。同展示は、4月に九州国立博物館(福岡県太宰府市)で約2カ月間開催され、8月23日まで北海道立近代美術館(北海道札幌市)で開催中だ。記者自身、実際に札幌の展示を見た上で、来場者の声を聞いた。
チベットの仏像やタンカ(仏画)、経典、仏塔や仏具など123点を揃(そろ)える展示は、圧巻だった。仏像は、全身黄金色の彩色が施されていたり、トルコ 石の青や山サンゴの赤で飾られていたりする。しかし豪華な色彩の中に下品さを感じないのが、チベット美術の魅力だ。ドクロを携えていたり動物の顔をしていたり、一見恐ろしくもある仏像も含めて、どの仏像にも優しさが感じられる。ガラスケース越しではなく間近で見られる仏像も多い。
入り口付近に「中国は、古くから統一された多民族国家」とするパネルがあった以外は、良質の展示に思えた。しかし出展元となっているチベット寺院は、1950年代の中国による侵略やその後の文化大革命によって破壊されてきた。中国がチベットを侵攻したがゆえに、私たちはこれら貴重な仏像を一カ所で見る ことができている。そう思うと、仏像の優しい表情には、チベット人たちが仏に託してきた祈りの重さや悲しさを感じずにはおれない。
出口で、来場者に感想を聞いた。
「貴重なものを見られて良かった。十一面千手観音像が特に印象に残りました。チベット人がこれに抗議していることは知りませんでしたが、言われてみれば、最近のことが(展示には)なかったですね」(28歳カップル)
「とても勉強になりました。抗議のことはいま聞いて知りましたが、それでも、こういう展示がなくなってしまうと困る。(展示の)冒頭にあった『中国のものだ』みたいな文章は、さすがにどうかと思いますが……」(38歳男性僧侶)
ほかにも何人かに感想を聞いたが、全員が「とてもよかった」と口を揃える。一方、抗議の事実を知る人は皆無だった。その後、九州国立博物館での展示を見たチベット支援者に、メール等で感想を尋ねた。
「確かにチベット展でチベットの実情を知るのは無理でしたね。会場の外では、中国の方がチベットとインドとその他アジアの様々なグッズを、さもチベットの ものであるかのような感じで販売していて……。しかし美術品を(チベット問題という)政治的な背景を含めて展示するのは、難しいのも確かでしょう。もし美術品を通してチベットに興味を持ってくれる人が現れ、その中の一人でもチベットについて調べようとする人が現れれば、それでいいのかもしれません」(九州チベットを考える会・浅川浩二氏)
久留米チベット文化交流会の中間令三氏は、「正直、展示を見に行くかどうかためらった」という。入場料を払うことで、中国にお金が渡るのがいやだったからだ。それでも、実際に見なければ語ることはできないと考え、会場に足を運んだ。
「会場に行くと、もちろんチベットの国旗があるはずもないのですが、意外に中国(のプロパガンダ)を思わせるものも殆どなかったことに拍子抜けしたくら い。私としては、博物館側がチベットの現状をご存知かどうかは分かりませんが、今回のチベット展を純粋に仏教美術の展覧会として企画・展示に尽力頂いたのだと受け取りました」(中間氏)
展示が「チベットの現代史についての説明がない」という点を除けば、展示に対するチベット支援者の評価は冷静であったり、好意的でさえある。一方、記者は展示内容とは別に気になる点があった。前出の浅川氏も触れている、会場でのグッズ販売だ。次回、「聖地チベット」展とともに全国をまわる中国美術商につい てリポートする。【つづく】